皆さんは先日発売されたMrs.GREEN APPLE(以下ミセス)の新アルバム「ANTENNA」を手にしたでしょうか。
またお聴きになったでしょうか。
先日「ANTENNA」を曲解説と考察したのですが、このブログでは「橙」の曲解説、考察をしていきたいと思います。
よければ「ANTENNAの曲解説、考察」も見てみてください。
そして「橙」をまだ聴いていない人はアルバムの10曲目に入っているのでぜひ聴いてみてください。
さらにこの「橙」はフェーズ1最後のアルバム「5」の「Theater」の代わりになるかもしれなかった曲とのことです。
そんな「橙」を対になっているかもしれないという「藍」と歌詞を見比べながら曲解説と考察をしていこうと思います。
歌詞を読み解く
(歌詞はMrs.GREEN APPLE「橙」からの引用)
懐かしいねと語り合えば 現実に愛のある毛布がかかる
まずこの曲は二部構成になっており、大人になった自分と子供の頃の自分の両視点の歌詞が存在します。
冒頭は大人(今)の視点から描かれた歌詞で「懐かしいねと語り合えば現実に愛のある毛布がかかる」という部分からは、愛する人と子供の頃を振り返り懐かしみながら眠りにつく様子が描かれています。
毛布というワード一つで「Theater」のように、ストーリーに終止符が打たれる様も表現出来ているので流石としか言いようがありません。
また愛というワードからもしかするとこの歌詞を思い浮かべた方がいるのではないでしょうか。
それは「藍」の大サビ前、
愛のために生きるのなら それに口出しはしないけども 大きな心で唄を歌うことは 僕にもまだ無理だろう (Mrs.GREEN APPLE「藍」からの引用)
この時の歌詞はいわゆる子供の頃の歌詞と言えるでしょう。そこにも同じ愛というワードが出てきました。
寛大な心でまだ愛を歌えないというこの頃の歌(藍)に対して今の歌詞(橙)は愛を抱きながら過去を振り返るという対の歌詞となっています。成長を直で感じることが出来てとてもエモいですね。
帰りたくなる 戻りたくなる あの道は新しくなる 帰りたくなる 戻りたくなる 過ごした日々は何処にある?
「帰りたくなる 戻りたくなる」という歌詞からはそのまま過去に戻りたいという歌詞ですが「あの道は新しくなる」とはどういう意味でしょうか。ここでもう一度「藍」を振り返ってみましょう。
昨今街頭光付く暇も 無く泣く ただ泣く 泣きべそかいて歩いた道 見えた景色のお空は青 なぜここにいて なぜ生きていて なぜ悲しませるかは謎 (Mrs.GREEN APPLE「藍」からの引用)
「泣きべそかいて歩いた道」という歌詞がサビで出てきています。
街頭に光が付く暇もないほど早い時間から泣いた道、そしてそれに反して空は青く自分との対比に自己価値への疑問を呈した歌詞になっています。
それを踏まえてもう一度「橙」に戻ると「あの道は新しくなる」の歌詞の意味が見えてくるような気がしませんか? その絶望していた、泣きそうで飽きそうな人生もこれから新しく良くなるという未来から視点で大森さんは慰めてくれています。
遠い未来夢見る大人の背中 待ちきれないねと語り合えば 心に愛が分かる計りが出来る
2番は1番と打って変わり、子供の頃の視点へと移り変わります。
「遠い未来を待ちきれないと語り合えば、心に愛が分かる計りができる」
憧れの未来を追ったり夢を抱きながら歩みを進めれば寛大な心が出来上がるという、この部分も大人になってから考え方が変わった大森さんの「藍」に対するアンサーとも言えるのではないでしょうか。
いつの日か俺らは大人になれる いつの日か俺らは大人になれる
ここは先ほどの大人視点では「いつだって僕らはあの日のままだ」という歌詞ですが、一人称に違いがあります。
大森さんの作る歌の一人称は僕、私、我が使われることが多いのですが、ここでは俺が使われています。
これは単に時代を表すための表現ですが、大人と子供の違いを一人称だけで表すのはとてもシンプルで分かりやすく、どこか懐かしさも感じやすい歌詞だと思います。
泣きじゃくる夜も 笑い合えた今日も 全ては僕の宝物 僕らを染める 夕焼け空を 死ぬまで忘れはしないでしょう
「泣きじゃくる夜」というのは「街頭に光が付く暇もなくただ泣いたあの日」のことを指しているのでしょうか。
その経験も全て今からすればいい思い出で、全てが大切だったと言ってくれています。
タイトル「橙」の由来となっている「夕焼け空」は、苦い辛い思い出の「藍」の対義語ともなっており、1日の終わり(フェーズ1の区切り)と綺麗な光景(いい思い出)が表現されています。
情景が思い浮かべられるとても綺麗な歌詞を大森さんの表現力で歌唱されており、ライブで聴きたい楽曲です(生で聴いたら泣いてしまいそう…)。
帰りたくなる 戻りたくなる あの道は新しくなる …
… 帰りたくなる 戻りたくなる 過ごした日々は此処にある
最後のパートでは子供と大人視点が交互に描かれています。内容はこれまでと同じですが、使われているワードに少し違いがあります。
ここで大森さんが最も言いたいことは、今(この楽曲でいう子供時代)が辛く苦しくても未来に向けて歩みを止めなければいい景色(いい未来)が待っているということです。
その過ごしてきたいい思い出や悪い思い出の結果(この楽曲でいう大人時代)が此処にある。
すべて踏まえた上での未来なんだと言ってくれています。
Spotifyオリジナル企画「Liner Voice+」で大森さん本人が言及されていますが、子供の頃に見る夕焼け空と大人になってから見る夕焼け空は同じだけれども、見る時代によって見方が変わってくるという楽曲になっています。
終わり
いかがだったでしょうか。
大森さんはこの曲をフェーズ1の「5」の時にはすでに完成されていたみたいで、どれだけ大人な感性を持っているのだと驚愕させられます。
過去の楽曲を踏まえてのアンサーソングや「クダリ」のような過去と今みたいな曲が大好物なので、この楽曲もすでに大好きな曲の一つになっています。
また今回「橙」のリリースを踏まえた上で去年のゼンジンツアー2022を振り返ると、一曲目が「藍」でライブが始まっています。そう思うとストーリー性を感じられて感慨深いものがありますね。
先述の通り、Spotifyオリジナル企画「Liner Voice+」では大森さん本人の解説がされているので、ぜひ気になった方はお聴きください。
この記事の他にもミセスについて取り上げているので下の関連記事からもし良ければ見てみてください。
それでは読んでいただきありがとうございました!
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